2026.06.24
前回までのおさらい前回のブログでは、古くなった和形瓦と、その下に敷かれていた葺き土(瓦を固定するための土)をすべて撤去し、屋根の骨組みである垂木(たるき)を流して、その上に野地合板(のじごうはん/屋根の下地となる板)を張るところまでをご紹介しました。これで新しい屋根材を載せるため…
奈良県宇陀市のお住まいで屋根の調査を開始しました。こちらの屋根に葺かれているのは、一見すると昔ながらの日本の住宅によく見られる「和形瓦(わがたかわら)」ですが、実は素材が粘土を焼き上げた陶器ではなく、セメントで作られている「セメント製和形瓦」です。
セメント瓦とは、文字通りセメントと砂を混ぜ合わせて型枠に流し込み、成形して作られた屋根材のことです。陶器の瓦と比べて製造コストが安く、かつては広く普及していました。しかし、陶器瓦のように素材自体に水を弾く性質がないため、製造時に表面を塗装して防水性を持たせているのが大きな特徴です。
実際に屋根に上って近くで確認してみると、築30年近くが経過していることもあり、瓦表面の塗装被膜がすっかり褪せてしまっていました。塗装が剥がれ、セメントの基材がむき出しになっている状態です。
とくに「桟山(さんやま)」と呼ばれる、瓦の波打っている凸の部分(一番盛り上がっている部分)は、雨風や紫外線の影響を強く受けるため、著しく塗膜が劣化していました。塗膜が失われると瓦表面の水はけが悪くなり、水分が長く留まりやすくなります。その結果、水分を好む苔(こけ)が繁殖してしまっています。
「瓦の塗装が剥がれて基材がむき出しになると、そこから水が染み込んで雨漏りしてしまうのでは?」とご不安に思われる方もいらっしゃいます。結論から申し上げますと、塗膜がなくなったからといって、それが直接の雨漏り原因になるわけではありません。屋根の防水は、瓦の下に敷かれている「ルーフィング(防水シート)」が最終的な要となっているためです。
しかし、決して安心はできません。塗装が剥がれて瓦の表面がザラザラになると、雨水の流れが滞り、土埃などの汚れが非常に溜まりやすくなります。この汚れが瓦同士の重なり部分に詰まる「目詰まり」を起こすと、雨水が正常に下へ排出されず内部に逆流し、結果的に雨漏りを引き起こすリスクが高まります。また、雨水と一緒に流れ落ちた大量の汚れや苔が雨樋(あまどい)に蓄積し、汚泥となって樋を詰まらせてしまう原因にもなります。
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